花摘む乙女
さき



花を
花を摘みます
何度経ても
懐かしいと思う
春先
まだ小雪がちらつく

柔らかい
萌黄をすり潰した指先を
ほんの少しだけ
口に入れ
ほろ苦い
顔を
思い出しました



果てしない
夢を
夢を見ました
少しだけ以前
宇宙よりも
先に生まれた
純白の繭の中
誰にも侵されない
私だけの世界
神様も
貴方も
私ですらも
この世の全てが
まだ良く知らない
私を
醸成した
不思議
あの夜が
きっと
私を納得させたのです



例えば
漸く
暖かい
なんて言葉を思い出す
今頃
日の光に透けて
少し色を薄めた
貴方を
この世のものにしたい
と思う私は
そしてその首筋に
私だけの印をつけたい
と思う私は
やはり
突飛で
貴方をきっと
困らせ続けるのでしょう



長い
長い冬の夜を
過ごした後は
固まり
冷えてしまった
自分自身に手を焼いて
たまにこうして
花を摘みに行くのです
可憐な花びらに触れて
たおやかな茎を折り
まだ
そんな自分を
夢にも思わずにいた
乙女だった頃を
貴方にも
見せたいと
思って









自由詩 花摘む乙女 Copyright さき 2007-03-11 17:10:07
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