お祭り
はじめ
音符が飛んだ祭り囃子の音が聞こえる
今日は君と初デート
ひょっとこのお面を頭に斜めに付けたおじさんが踊っている
両脇を固めるようにしてずらっと並んでいる色取り取りの出店
電球の入った提灯が可愛らしく山頂までそれらに並んで続いている
焼きそばや玉蜀黍やイカを焼く煙が上がり
それらの匂いが混ざって充満し無意識のバリアを張っている
「お金払え」と脅迫しているようだ
カーキに輝くりんご飴 イチゴ飴
君が来る前にイチゴ飴を買う
それを噛み砕いて口の中で溶かして飲み込む
パタパタパタと音がして金魚が縫われた浴衣姿の君が現れる
頭のてっぺんでまとめた髪型が愛らしい
君と手を繋いで出店をゆっくりと回る
和太鼓を叩く規則的な音が山頂から鳴っている
男達の酸っぱい汗がここまで飛んできそうだ
ヨーヨーを伸縮させ僕の手首には赤と黒の金魚が袋の中で泳いでいる
君は雲の塊のような巨大な綿飴を顔を埋めるように囓っている
人で塗り潰されている道 みんな共有している快楽を持っているようだ
土の階段を登って 広場に出ると時間を操作している音楽に合わせて踊る人々がいた
みんな下の出店で買ったお面を付けている
涼しい風が僕らの間を通り過ぎる
夜空が近い
お祭り用の小さな花火が打ち上がった
空を見上げて君は微笑んでいた
色取り取りの花火の光が君の顔を鮮やかに彩っていた