BGM
はじめ

 停車中のBMWの鼓動が聞こえる
 よく耳を澄ましてみるとR&Bの打ち込みの音だった
 人々は行き交い通り過ぎていく
 黒張りされてよく分からなかったがBMWのドライバーは留守のようだ
 エンジンを入れっぱなしにしている
 車内のミント系の香水の匂いがここまで漂ってきている
 僕は立ち尽くしている
 誰も気にも留めず足早にあらゆる目的地へと向かう
 中には目的のない人もいるだろう
 例のドライバーはまだ帰ってきていない
 車は宝石店の前に止まっている
 僕は広い空を眺めているだけだ
 灰色の街
 空を飛べてこの街を飛び回ればいいのにな
 車内のBGMが正確なリズムを刻んでいる
 BMWから伸びる何かが風を斬って進む車道の車に轢かれる
 僕はBMWと共鳴して車道を走る車の風を斬る音に心を傷つける
 もうしばらくBMWと一緒にいたい
 しかし宝石店から女性を連れてドライバーが出てきた
 髪を後ろに持っていっている 茶髪だ
 女性の方はあまり目立たなかった
 ドライバーは左のドアを開けて滑り込むようにして車に乗った
 女性は腹が立つぐらいにゆっくりと車内に入った
 ブウウンとエンジンを噴かしてBMWは発進した
 僕は排気ガスを全身に浴びて匂いを嗅いだ
 排気管から零していた涎が小さな染みをつくっていた


自由詩 BGM Copyright はじめ 2007-03-10 18:01:02
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