恥をしのんで生きよう
しゃしゃり
女にふられたけれど、
もうすべて失いついでに失っても、
恥をしのんで生きようと思った。
だから友よ。
きみも死ぬな。
俺はもう歌わない。
もううたううたはない。
夏は終わった。
三年前に買った外車の車検がきたよ。
それもふられて買ったのさ。
でも売ってしまう。
担当だったヒダカ君も、
女にふられてやせてしまった。
なにせ、ヒダカ君は、
プロポーズしてOKをもらったのに、
その三日後に、
やっぱりいやです、
とふられた猛者だ。
給料三か月分の律儀な指輪さえ
返してもらえなかった勇者だ。
勇者といえば阪急ブレーブスさ。
俺たちのマルカーノはもういない。
山口高志の剛速球ももう見えない。
笑ってしまうほど、
どんなに恋焦がれても、
もう終わりだったって、とっくにわかっていた。
それは愛じゃない。
執着心だ。
愛と執着心を、
どうして俺たちは、こんなに間違ってしまうのだろう。
俺は恥ずかしい。
俺は俺が恥ずかしい。
まるでブラが透けてラブが見えるように、
恥ずかしい。
だがその恥をしのんで、
生きようと思う。
もう死のうなんてうたはうたわない。
俺たちは、いつも自分自身として、生きなければいけない。
友よ、
だいじなことは、たぶんそれだけだ。
自分の手しか届かない。
だからせいいっぱい伸ばせばいい。
背を曲げるな。
胸を閉ざすな。
君はちいさくはない。
たぶん、伸ばしたゆびさきの、
ほんのすこしだけ先に、
俺たちの導火線がある。
傷ついただけ、トンネルの向こうは近い。
まぼろしの日本シリーズだ。
ジョニーとマリンちゃんの物語も、
つぎで最終回さ。
人生勝ち越さなくてもいい。
ただいちどきり、きみも俺も、
あのまばゆい光のなかへゆこう。
そしてフルスイングを決めるのさ。
こころの真芯で打とうじゃないか。