「チョウ」 (青年詩片)
ベンジャミン
(美しく生まれたかったと
思ったこともありました)
ある日
一羽のチョウが迷い込んできて
羽を持って生まれてきた生き物は
そんなふうに飛ぶのが
当然なのだというように
ゆらりと抱いた風をふくらませて
ほどけた花びらのように飛んでいました
あれはそう
たしか去年の今頃
あなたとよく似た
けれどあなたとは違う
あなたに出会ったことを覚えています
(美しく生まれ変わりたいと
願っていた頃のことです)
いつか見たあなたは
もう飛ぶこともできずに
その美しい羽だけを残して
もうあなたではなくなっていたから
それを悲しく思いました
まるで
それが美しさであるような
そんな錯覚まで感じてしまうほどに
儚い姿のあなたを見ました
(美しく生まれ変われると
思い込んでいたからです)
けれど
こうして今年も
あなたに出会えたことを嬉しく思います
わたしは
羽を持って生まれることも
まして美しく生まれることもなかったけれど
あたえられたものの意味を知れば
それは同じように儚くとも
わたしは
これから先を
美しく生きようと思えば
そうすることもできるのだから