愛してる。
朽木 裕

白い眼帯が夜色の世界に映える。
ざぁざぁ狂い風。

外は寒いね。
ここも寒いよ。
そうだね。
そうだよ。

どちらからともなく命を込めてキス。

眼帯を嵌めた君とキスするのはなんだか不思議。
私の左半分は見える?くちびるは此処だよ。

「ね、」

「…愛してるよ、」

「ん、」

こんな時ばかりは言葉すら邪魔になる。
けれど何度も噛みそうな舌で伝える。

愛してる。
愛してる。
愛してる。

なんだってするから傍にいてよ。

寒いって云ったら温めて。
淋しいって云ったら飛んできて。
顔をあげたらキスをして。
欲しいって云ったら、頂戴。

「…ど、こにも、いかない、で」

「いかない、から、離さないか、ら」

愛してる。
愛してる。
愛してる。

どうしてこんなに涙が出るの。


散文(批評随筆小説等) 愛してる。 Copyright 朽木 裕 2007-03-07 15:22:06
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