粗雑に書く(親指1000字エッセイ)
佐々宝砂
粗雑に書いてみようと思う。何も調べずに、なるべく何も考えずに。こんなことをするのは、もしかしたら私はものを粗雑に書けないのではないかと不安になったからだ。現実の私はかなりデタラメでいい加減だが、文章上の私は(チャットでの言動を含め)自分で嫌になるほど厳密で融通がきかない。
エッセイを書くときも詩を書くときも、私は常になんらかのスタイルを貫く。大げさに言えば私の文章はすべてが定型だ。たとえばこれまで書いた私の親指エッセイは、全部下調べなし考えなし適当でまかせで書いたものなのに、みなきれいに起承転結の四段落の構成を持つ。
このことに気づいたのは今朝だ。気づいた以上私はこの定型を意識する。定型内で書こうと定型外で書こうと、定型を意識することからは逃れ得ない。定型とはそうしたものだ。
そして私はどこまでも定型の人間なのだろう。粗雑という定型を作るか、緻密という定型を作ってそこから外れるか、私はそうした方法でしか粗雑になれないだろう。そしてその粗雑は決して本物の粗雑にならないだろう。私の文章は完璧を目指して決して完璧には至らない。粗雑にすら至らない。私はそういう人種であり、それはたぶんどうしようもないことなのだ。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
親指1000字エッセイ