孤空のコーラルグリーン
はじめ

 電車一本バス二本乗り継いで君の通っていた大学へ行く
 鉄道研究会の部室には君が毎日書き記していた日誌が置いてある
 僕はそれを広げてみる
 君の文字が丁寧にしかし可愛く刻まれている
 文章を読んで君の顔が浮かんできた
 屋久島まで鉄道と船だけで行った時のことが書かれていた
 あの時の君は灼熱の太陽の下 晴天の青空の下 真っ白い肌の君は素敵だった
 日焼け止めクリームを塗る姿も白のハットもとっても可憐に見えた
 海の色はコーラルグリーンだった
 船が港に着いた頃には既に太陽は沈んでいて屋久島を行き交う船が橙色に染まってとても美しかった
 近くの民宿に泊まり翌朝屋久杉を見る為登山を開始した
 山の頂上に辿り着くまで半日以上かかる
 急な坂を登る時 君ははーはー息が荒くなって
 僕が「大丈夫?」と聞くとにっこり笑って八重歯が見えた
 頂上には巨大な屋久杉が天まで伸びていた
 僕達は笑って記念写真を撮ってもらい下山した

 僕達は付き合い始めた

 ある日君は突然姿を見せなくなり
 クリスマスの朝に屋久島で遺体となって発見された
 クリスマス・イヴの夜に崖から飛び降り自殺して死んだらしい
 日誌には「あなたに会えて本当に良かった」と書かれていた
 僕は涙を流し 日誌を閉じた
 コーラルグリーンの海には君への想いがいつも漂っている


自由詩 孤空のコーラルグリーン Copyright はじめ 2007-03-06 17:42:27
notebook Home