「手のひらの地図」 (青年詩片)
ベンジャミン
その線の流れは
いくつもの分かれ道があっても
不思議とまっすぐに見える
迷い間違えながら歩いているようでもそれが
過去となれば運命と名づけられるからなのか
生まれながらにして刻まれた
その地図には記憶がない
どれほど傷つき
どれほどの喜びを得ようとも
それが記憶されることはない
懸命に駆け抜け
あるいは立ち止まってしまったときでさえ
その痕跡を残すこともなく
どこで始まり
どこで終わるのか
今がどのあたりなのかさえわからないまま
ただ幾筋もの分かれ道を従えて
その中を歩いているということだけを
瞳に焼きつけることができる
その地図には記憶はない
けれど常に
先を見通すことなく先があることを告げている
手のひらを見つめる
その地図の上に立つ自分を見つめる
どんなに辛くとも
どれほど覆いたくなるような現実があっても
それで顔を隠し
見つめる先を閉ざすためにあるのではないと
言い聞かせる
手のひらを見つめる
たとえ今がどこであろうと
まだその途中であることに気づく