夜の体温
朽木 裕

もう少し、
もう少しだけ此処に居させて。
君の隣りに居させて。
この夜の体温を感じさせて。

もう少し、
もう少しだけ残酷に愛して。
残酷に夢を切り刻んでしまって。
手遅れになった私を拾い集めて愛していて。


「見つけてくれて有難う」


この夜の片隅から。
この広く腐った世界から。
手を引いて救い出してくれて


ありがとう。


「愛してくれて有難う」


こんなにも小さな人間を
大きな愛で愛してくれて有難う。
生きる意味を与えてくれて有難う。
死なない理由を与えてくれて有難う。


「好きだよ」


どうしたらいいか分からなくなるくらいに。
泣きそうなくらいに。
狂いそうなくらいに。


「大好きだよ」


今すぐ飛んでいって抱き締めたいくらいに。
体温思い出して矢っ張り泣いてしまうくらいに。
頭から片時も離れないくらいに。


「愛しています」


夜の体温を感じながら手を繋いだら
云えそうな気がしたけれど云えなかった。


「愛しています」


いつだって私は一番に伝えたいこと云えないまま。


自由詩 夜の体温 Copyright 朽木 裕 2007-03-06 00:34:02
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