微温湯日和
霜天
指先はあたたかい
たぶん、その、ほどけていく瞬間まで
写真の空は記憶よりも鮮やかで
古い団地の隙間から
見上げるのはたくさんの
呼吸のない、窓
手のひらに
折りたたんだ空
に、記載されたのは
まだ青い3月
境目の、春
手をかざし耳を空、へ
通信は良好
聞きたいことばかりが届いてくる
そんなわけにはいかないのだけれども
いつだって耳を塞げば簡単に流れていくはず
で、そんな風には吹かれてみたくて。春の芝
生に寝転べば、ああそうだったね、何て忘れ
てしまう。教訓、後悔、そんなことばかりが
身につかなくて。結局空に近づこうとした。
なんだかんだ、で僕らは固体に戻っていく。
切り揃えた前髪に、誰も気付かないし、気付
かせない。集団の中のそんな存在証明。詰め
込まれた苦しさとか、結局抱き合ってみせる
僕らの。それは遥か国でも。微温湯の中で眠
ってみたいけれど、きっといつかは風邪を引
いてしまうから。ハローと来て、ハローと返
す。いつまでも隠れられるわけもなくて、隠
せていけるものなんて、どこにもなくて。
愛しながら覚えた道を
後ろ向きに
辿る景色で探したものは
日当たりは、良好
つかめなくて、微温湯の中の
淡い色のボールは
いつか投げ込まれたままの窓から
君がかたち、だけ忘れていったもの
日々の水溜りは
どこか、緩い
焦らずに生きるには
きっと、呼吸が足りない
いつか空の上を飛んでみせてほしい
この微温湯の空の上、を
避けられないように
花びらを一片
浮かべておくから