灯
紅柳みつば
まるで
この世の
全てのものが
寝静まったかのような
そんな静寂に
包まれたとある一角
溝の中で自慢の目を
光らせる野良猫さえも
その混沌とした
闇に溶け込み
遠くで一声
か細く鳴く
ただ ただ
空を見上げれば
ぽっかりと浮かぶ
月があり
その鋭さは
孤独におびえた胸を
ちくりと刺す
今なら言える
誰にも告げることのない
心のうちを
窓から入る
わずかな光は
確かに私を指して
さあ、
と言わんばかりに
スポットライトを当てる
いったい何を
恐れているのか
全てが虚しく
手放すことに走った
この瞬間さえも
やはり月は
目の前から
消えることはなく
これから先も
どこまでも私を
追うだろう
まるで
この世の
全てのものが
寝静まったかのような
そんな静寂に
包まれたとある一角
一人の若者は
誰にも気付かれることなく心のうちに
わずかな光を宿し
差し込む光に
まぶたを閉じた