白昼夢
仲本いすら
流れてしまつた雲を追いかけて
防波堤を越えた、二人だけの流星を掴み
散りばめたあとの笑顔を見ましたら
それはもう、美しいとしかいい様のないほどに
ふたりの時間は流れていつたのでした。
ぎいこぎいこと鳴くペダルを漕いで
悠久の海を渡つてゆきます
アスハルトの熱さに嫌気がさした
ふたり逃げ出したのです
蒼空は笑つているように思えました
ふたりは、笑つています
今までの些細な悪戯を数えながら
ペダルを漕ぐ足は速さを増し
(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)
今までの些細な悪戯を数えながら
ペダルを漕ぐ足は速さを増すのです
あなたは、きようの事を話しながら
制服のぼたんを外してゆき
(手を振つているひとが見えます)
(くやんとした顔をハンケチで拭い)
(ふたりに手を振つているのです)
今わたしも第一ぼたんに手をかけ
制服を脱ごうとしています
あなたはそれを笑つて
またペダルを勢いよく漕いでいつたのです
軌跡を儚げに
残しながら。
(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)