渋滞
はじめ

 記録的な大雪で車道は渋滞を起こしていた
 町は大騒ぎだ
緊急に除雪機が収集され何台も何台も車道の雪を退けていた
 渋滞待ちの時にフロントガラスが埋まるほど雪は降り積もった
 常にワイパーをかけっぱなしにしておいてもすぐに視界が見えなくなるので
 一旦車を降りてブラシでフロントガラスの雪を退けないといけない
 排気ガスだけが立ち上る渋滞
 はたから見るとF1レースのシグナル待ちをしているマシンの群れのようだ
 一向に進まない
 今日は娘の卒園式なのに
 妻はイライラしながら後ろを見たりバックミラー越しに僕を睨んだりしている
 まだ玄関の卒園式という看板の前で写真すら撮っていないのに
 このままじゃ間に合わないな
 ハンドルを人差し指でトントンと叩いて前の車がちょっとでも進むのを待っている
 前の車の排気ガスで視界がさらに見えない
 僕はチッと舌打ちを打って内側からフロントガラスを擦ったが何も変わらなかった
 妻が「何無駄なことやってんのよ!!」と激しく怒鳴った
 僕はごめんと後ろを向いて謝った
 彼女はイライラしていてちょっとしたことでも気に障るらしく僕は一挙一動に神経を費やさなくてはならなかった
 車が数十センチ動いた
 僕は雪を退けるついでに車を降りてどのぐらい先まで渋滞が続いているか見てみた
 …果てしなかった
 肩の雪をほろって運転席に戻るとバックミラー越しに妻を見てこう言った
 「卒園式間に合いそうにもないね」
 妻はふぅーと溜め息をついてしかたないわね、という顔をしていた


自由詩 渋滞 Copyright はじめ 2007-03-02 17:28:47
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