丘の上
水町綜助

澱んだ町にいる

それは川底だっていい

俺は黒い汚らしい鯉の鱗でいい

どろりとしたみずのなかから輝く鏡の水面を覗く

そこに汚れた気泡を吐きちいさなとてもちいさな波紋だけを浮かべる

鯉のそのたった一枚の鱗でいい

あの高貴な愚か者だけが立ちうる小高い丘の上

そこは乾いた風と空が真っ青に渦巻き胸騒ぎを

早すぎる動悸をくれる



丘の下で

橋桁の上で

車と車がぶつかった

フロントガラスが割れて人が割れて

それは俺とおまえにやさしい数少ないひとたちだよ

きりきりした破片と赤い血が川に落ち丘を汚す

どっちだっていい

どっちだっていいよ

どうせ見るんだよ

どうせ見つけられて

見せつけられる

丘の上にいたいか

そこから見下せよ

川の中は暖かくて

汚くて

臭えよ

どうせどっちにしたって

綺麗になんかしていられない

糞みたいな言葉と借り物の言葉の違い

どっちだっていいよ

すきにしなよ



自由詩 丘の上 Copyright 水町綜助 2007-03-01 17:37:57
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