「春待ち」
和 路流(Nago Mitill)

青い空を夢見て 目を閉ざし
僕は ずっと待っていたんだ
春が僕のもとへ やってくるのを

春が来て あたたかな陽と優しい風が辺りに満ちたら
その時 僕は目覚め 大きく花開こうと思っていた
灰色の重い空の下 木枯らしの吹きすさぶ不毛の地の上
僕は ずっと待ち続けた 春が僕のもとへ やってくるのを

何年もの間 目を閉ざし続けた僕は
現実逃避という名の 長い長い夢を見ていた
鏡を直視することもできず 斜め向こうの歪んだ自分と目を合わせ
何もかも上手くいかないのは まだ自分のもとに春が来ていないせいだと信じて
僕は ずっと待ち続けた 春が僕のもとへ やってくるのを
彼方の青空に憧れながら
僕は ずっと恨み続けていたんだ 春が僕のもとへ やってこないのを

でも それでは駄目なのだね 人は花とは違うから

何十年何百年と雪の下で ひたすら望む春が来るのを待つことはできない
春を待つ傲慢さが 植物である花が持たない 人の可能性を忘れさせていた
僕には 足がある 春を探しに行くための
人は花とは違うから 
自分で あたたかな地を目指さなければならないのだね

青い空を信じて 僕は立ち上がる
あたたかな春の地を目指し 灰色の地を旅立つ
僕が自分を独り閉じ込めていた白い雪を ゆっくり踏みしめながら


                (2007年・筆)


自由詩 「春待ち」 Copyright 和 路流(Nago Mitill) 2007-02-28 21:25:27
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