ゆく春に
刑部憲暁

日曜日
春が冷たい手で触れるから
さわられたぼくは立ち竦む

でも 散ってゆくものを
追いかける道は見つからない
東京はどこもかしこも
アスファルトで
ぼくたちの走る土は
見当たらない

きのう おじいちゃんが話してくれた
「人は自分が体験することの意味を
 分かっているとは限らんからな」
きょうもぼくの掌に
舞い降りるものがある

ぼくの見た春だった
ぼくのうたった 春だった
だから ぼくが掌を吹くと
まだ春は揺れるでしょう?
あなたのところへも
春は流れて行きますか?


自由詩 ゆく春に Copyright 刑部憲暁 2004-04-18 07:38:47
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