竹想花伝
朱雀
翠の竹生に月夜影
稲穂に似たる紫は 二目と見れぬ稀有な花
最期の時を飾らんと 今を盛りと咲き満つる
風も無き夜に竹葉が騒ぎ 月花に浮ぶ舞姿
『汝 仕舞のこの際に 何を覓ぎて此処に立つ』
葉音の影の問い声に
答え代わりの移舞
虚仮の一心 仕似せるほどに
透影の中で孛へり
和魂宿らせ女となり
鬼を宿らせ鬼魅となる
神に 修羅に 狂人にも成り変り
舞いて 舞いて 花を知り
偏に舞いて 花を失し
やがて真の花と成る
枯れ逝く時分に見継ぐ幽玄
遺す種子に遺念を委ね
有心を払い 無心に還る
尽未来際 嵩を増し
長を長じて 花伝となりぬ
※世阿弥の『風姿花伝』を元にした若き舞人と竹の花の物語。
■あらすじ■
今まさに花を咲かせて枯れゆこうとしている竹が、今を盛りに
「時分の花」を咲かせて舞う青年の中に、さらに年を重ね舞い
続ける花追い人の姿を見て、残してゆく種に自分の思いを留め
ようとします。
やがて再び、枯れた竹林にその思いを乗せた若竹が育ってゆくと
いうお話です。
■風姿花伝■
世阿弥が能の稽古のあり様を「花」と言う概念で示した芸術論で、
その花には「時分の花」と「真の花」の二種類があります。
「時分の花」は若さという時が与えた誰ににでも備わっている花で、
やがては失われていきますが「真の花」はそれを求めて稽古を重ね
高度な技術と深い人生経験をふまえた演者のみが身に付けることの
できる花で、これは失われる事はありません。
「その風を得て、心より心に伝わる花なれば、風姿花伝と名づく」
という一節は、今もなお、すべての芸術の使命を伝えて余りあると
言われています。
■竹の花■
竹は元々イネ科の植物で、発芽してから長い年月、地下茎によって
繁殖を続けますが、ある一定の時期に達すると一斉に花を咲かせ
種子を実らせて一生を終えます。
その周期がとても長く、花を咲かすのに60年または100年かかると
言われ、開花するとその竹林は枯死してしまいます。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四文字熟語
詩物語