百子同室
朱雀

んだ柘榴を ひと齧り

愛しいあの子の味がする

たまに根付いた夜叉の念

如来に帰依せど 忘らりょか


ぷつりと潰れた舌触り

あの子の目玉と瓜二つ

言いえて妙な吉祥果


魔障ましょうはらいて 子を守り

経の読誦どくしゅも欠かさずに

二度と喰いは致しませぬが

それでも覚えた蜜の味


胸の焔焔ほむらはちろちろと

煤けた染みを刻み込む


んだ柘榴を味わいて

愛しいあの子を懐かしむ




※もし自分が鬼子母神だったらという仮定で書いた物語。

=鬼子母神と石榴について=
鬼子母神は度々人の子供をさらって食べる夜叉でしたが、釈迦の諌めに
より改心し、安産・子育ての神となります。
仏道に帰依した鬼子母神に釈迦は子供の代わりに柘榴を食すことを許し
このことから柘榴は人肉の味がすると言われるようになりました。


自由詩 百子同室 Copyright 朱雀 2007-02-27 19:59:21
notebook Home 戻る この作品のURL
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四文字熟語
詩物語