延刑フランスパン
はじめ
あと一時間でこの詩を書き終えないといけない!
九時半には就寝のサイレンが鳴るはずだ
ここは刑務所 僕は万引きの罪で捕まった
囚人服姿に伸びた髪と無精髭
とても詩人には見えない
生活苦でちょっとパン屋に盗みに入っただけだ
たった一個のフランスパンで刑期一年だとよ!
僕の人生パーだ!
僕は今賭をしている
一日で十編の詩を書けるかどうか
書ければムショから出してやると看守の署長から持ちかけられたんだ
けどもし書けなかったらもう一年ムショの中!
今ちょうど十編目でもうネタは尽きてしまった!
どうしよう! もう時間がねぇ!
無茶苦茶に書くがこれじゃ署長に詩とは認められないので消しゴムで消す
何も思い浮かばねぇ! これじゃあもう一年ムショの中じゃねぇか!!
無性に焦り 無性に怒り
僕はペンを投げ捨てて紙をぐちゃぐちゃに丸めた
もう駄目だ…あと十分で何ができるっていうんだ…
そう落ち込んだ矢先
小さな光が天井から降りてきて両手で受け止めると途端にまばゆく光った
希望の光…
結局僕は就寝の時間までに十編の詩を書けなかった
当然もう一年刑務所にいなければいけないのだが
これでいいんだと思った
自分の犯した罪をきちんと償ってこそ人間ってもんだろう
そう考えてふっと笑うと眠るのも忘れてゆっくりと時間をかけて詩を書き始めた