大花火
はじめ
夢を見て飛び起きた
ビル群に花火の光と影が飛び散っていた
今日は年に一度の花火大会だ
同じように地上に大輪を咲かせている観覧車
光り輝いて点滅したり色彩を多様に鮮やかに変化させている
マンションのベランダのリクライニングチェアで寝ていた僕
飲みかけのビールの泡は潰れてしまっている
そういえば僕は成功したんだなと思う
ここは東京の一等地だ
花火も綺麗だが無数のビル群の巣窟から放たれる明かりが
混沌とした夜の暗闇や人間の蠢きが這い上がってくるのを押さえている
僕は立ち上がって深く深呼吸をする
光を全て吸い込みたい気分だ
けどふっと吹けばいとも簡単に消えそうな光だ
ビル群の無数のテールランプだけがリアルに人工的に点滅している
優しい夜景
瞼の裏に残りそうな光
気のせいか微かに漂ってくる火薬と真夏の幻想の匂い
生温い体温を発するコンクリート群
突き抜ける夜空とまばらに散らばる星々
人々のタバコの煙と自動車がまき散らす排気ガス
濁る東京と僕の目
僕は目がゴロゴロし過ぎたせいで涙が出た
清められていく大都市
火の玉が何百発も夜空に体当たりしている
当たって砕ける真夏の風物詩の種