真冬を知らない
千波 一也



わたしはまだ
運ばれてゆける


むずかしい物事を
ほかの名前で呼ぶよりも
ここが峠の途中なら、
そらにまぎれず
澄み渡りたい

あなたのそばには無い数を
おだやかに
解き放つ、太陽の真下


優しさはいつも後ろから
雲のかなたの眠りのように
及ぶはずもない、
ひとすじの
みち


留まりながら
うしないながら
なつかしさに長けてゆく
のぞみの水底は、
かたちを拒み
まもりを
永く


凍てつくことは灼けること
せめてもの願いたちが、
吐息をつづって
清らかに、
降り


赤からゆびへ
黒から波間へ

閉じ忘れられたとびらには
だれかの背中が
しずかに灯る

終われない、希求

青から生まれる熱の積もりに
白からのがれて
真冬はこぼれ

いつもいくつも






自由詩 真冬を知らない Copyright 千波 一也 2007-02-27 08:05:32
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