世界から抜け落ちて<18のprose-5->
ウデラコウ

人の流れに逆らって 夜の隅で
束の間の休暇を 弄ろう

僕達は あまりにもお互いに貪欲で それでいて
お互いを 労わりすぎるから

いつも 触れるか 触れないかで 離れてゆくけど
今日だけは 世界から抜け落ちて

煙草の味が 微かに残る 君を合図に

さぁ 全てを 放して 忘れてしまおう

大丈夫 もう誰も あのトビラをノックして
君を攫ったり 僕を攫ったりしないから

タイムリミットのベルが あのホームで鳴り響くまで
この境界線から 堕ちてしまおう

熱い君の手に 僕は不安そうに その額へ 冷たい手を 翳すけど
君は僕の手をとって 一度だけそっと笑むと
何よりも 何よりも 熱いキスを落す

その笑顔の裏にある 真実を 僕は少しだけ知ってるから
僅かにためらってみるけど

でも君が良いと言うのなら 僕に止める権利はない

無理矢理もぎ取った休暇は 早摘みの野イチゴのように
苦く 僕達を苦しめるのだけれど

それでも その奥にある 微かな甘さに 酔いしれて

君が 幸せそうに 笑うから
もう全てそれだけで 理由なんてなくなってしまうから

君を抱き締めながら 全ての時が止まって
君だけが 安らかに 眠ってくれれば良いと

何とも身勝手な祈りを 神に捧げて みたりした

早春の雨が 全てを濡らした夜に   





自由詩 世界から抜け落ちて<18のprose-5-> Copyright ウデラコウ 2007-02-26 22:45:39
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