はじめ

 この歌を超える詩を書こう
 僕は虹の彼方にあるものに向かって歩き始めた
 山を越え虹を潜った
 そこは真っ白な霧に包まれていた
 僕は遭難した
 辺りを見回してもどっちが北か東か南か西か分からない
 水蒸気がひどくて水滴で全身がびしょびしょになる
 肺にも水滴がついているみたいだ
 嫌な汗が流れてきた
 目を懲らしても濃密な霧のせいでよく見えない
 次第に不安になってくる
 もしここで息絶えたら…
 もう君には会えない
 霧を吸い込み過ぎたせいで頭がおかしくなってしまったみたいだ
 上手く頭が回らない
 そもそもここにやって来たのはあの歌を超える詩を書く為にだぞ?
 結局ここには何も無かった
 だんだん意識が朦朧としてくる
 ふらふらと体が言うことをきかなくなりついにはばたっと地面に倒れた
 頭の中であの歌が流れる
 悲しい歌だったな…
 うん
 君が僕の為に歌ってくれた歌
 意識の灯火がだんだんと小さくなってくる
 死に神がニヤリと笑って灯火の前にやって来た
 ふっ と息を吹きかけてすっ と消えてしまった


自由詩Copyright はじめ 2007-02-26 16:55:35
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