「北風が吹いている」 (青年詩片)
ベンジャミン



「西高東低の気圧配置はしばらく続くでしょう」と
天気予報のお姉さんが
カメラ目線でうったえている

僕はコートを羽織って
襟のホックを上手くかけられないまま
仕事へ行こうと玄関へ向かう


北風が吹いている

扉がなかなか開いてくれないのは
外側の圧力と内側の圧力が
対立しているからだ

もしかしたら僕は
試されているのかもしれない


北風が吹いている

葉を落とした木々を揺らし
関東平野を駆け抜けて
何処かで追い風だったそれが
今は向かい風になっている

なかなか開かない扉の向こうで
無駄に流れる時間が後退している


北風が吹いている

寒さとは違う何かが
僕を押しとどめようとしても
現実に吹く風は
常に扉の向こうにあるのだと


北風が吹いている

だからこそ僕は
この扉を開けなければならない



      


自由詩 「北風が吹いている」 (青年詩片) Copyright ベンジャミン 2007-02-25 12:57:20
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