perfume
三架月 眞名子

私の初めての香り

 サ ク ラ
     桜
   さ  く らーーー・・  ・


この歳になるまで香水とは無縁で、
買おうとも思ったことがなく、
むしろ、
あの無意味に強い香りに嫌悪感すら抱いていたのだが、
その中で二つだけ、
どうしても嫌いになれない匂いがあった。
同じ香水を街中で嗅ぐと、
一瞬のうちに、
幸せなんだけれど切なくなる。
そんな香り・・・
それは一種のアイデンティティーで
自分にも自分の香りが欲しいと思うようになっていた。
でも、

じゃあ自分の香りって?
自分らしい香りって??

と思うと、
どれを買っていいのか分からなくなって、
クラクラしながらも色々な匂いを嗅いでみたけれど、
結局どれもピンとこなくて買わず仕舞い。

そんな時、
雑誌をめくっていてであった香水。
それは"桜"の香水。
その記事に、
一瞬にして心が奪われた。


サクラ
さくら・・・

私の世界で一番大好きな花。
あの昼間は清純で、
でも夜になると妖艶な雰囲気を漂わす、
あの花の香り・・・
それは香水になるとどんな香りなのだろう?
と。
そして、
桜を自分の香りに出来たらどんなに幸せだろう・・・
と。

次の日、
早速売っているお店に足を運んでみる。
まだ発売はしていなかったのだが、
テスターがおいてあったので、
迷わずくんくんしてみた。(笑)
感じたのは、
甘酸っぱくて優しい香り。
正直桜と言われてもいまいちピンとこないのだけれど、
とてもとてもいい香りだし、
作り手が桜と言えば、
それは紛れもなく桜なわけで・・・

速攻予約。
あ、
でも、
大切な人の意見はちゃんと聞いたけれど。
だって、
せっかく自分が気に入った匂いでも、
好きな人に嫌いと言われる匂いじゃ悲しすぎるなって思ったので。
大切な人は、
私っぽいにおいだねと言ってくれたから、
もう迷う意味もないでしょう。

ということで、
数日前に私の手元にやってきた、
マイ・ファースト・パヒューム。
なにか特別な日に、
匂わせて歩きたいと思っている。



散文(批評随筆小説等) perfume Copyright 三架月 眞名子 2007-02-24 22:09:07
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