半身の詠唱
水町綜助

今朝この星で
産声を上げたばかりの
「完全」ないきものが
生まれた傍から言い伝えどおり半身はんしんずつに引き裂かれ
それぞれ渡り鳥に渡されて
島のうえ
西と東に
千年歴史を遡行して
飛ばされて
無実のうちに
落とされて
そして

剥がれた二つの半身は

そこで無数の詩にならない言葉を詠み始める

何編も何編も交わされるそれらのうたは

名前すら付かないうたで

だからこそ新しいいきもののからだを流れる

新しい血そのものだ

引き裂かれた半身はその断面から血を流し続け

泣く代わりに血を流し

泣く代わりにうたを詠む

それぞれ別々の名を与えられ

透明の半身を空想し

成長して

互いを探し出す

いきものの名はその時

どちらからともなく

自ずと発音される




僕たちの名は





そして

今朝生まれたいきものは

昨夜のシーツ上で受胎する

もううたを詠むことはない



自由詩 半身の詠唱 Copyright 水町綜助 2007-02-24 21:44:23
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