それは、冬の公園で
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それは、冬の公園で
午後の風はきみのもの
ちぎれてひとつ、またひとつ
木々を背にしたベンチから
息を吹きかける
胸がふくらみはじめた
一輪車で少女がすぎる

空をうつした水たまり
昨日の雨はきみのもの
沈んだまあかいおち葉が
忘れられそうなひかりを
やわらかく刻み
声の乾きも知らず
ボールを抱えてうつむいた少年

夕暮れを待たずたち去る恋人たちに
片足づつ地面を離れる影は
お互いの名前を大切に秘め
そのむこう
東へむかう飛行機雲は蒸発し
ゆっくりとゆがみながら
さいごにあっけなく
わらいながら
静かなまひるのたいように
ながれ星が
おちてゆく
とび立つはずのひいばりの
のどを焼きつくし
きみの世界が
ひとり、芝生からゆびを伸ばして
誰もいないプールに
金網ごしの
別れを告げる

冬の公園は
きみのほか何も見あたらない
きみはふるえるはり金のように走って
やがてゆげをあげながら倒れ
半円で
たったなないろの
圏にとじ込もる

いろ薄いこもれ陽は
きみ以外の誰を照らすこともなく
風はかた時も目をつむらない
夜になるときみだけが
水のなかにあって
夢をみる
いき場所もなく凍み
かすかな燐が燃えている





自由詩 それは、冬の公園で Copyright soft_machine 2007-02-24 09:00:26
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