罪と罰
海月

異国の国で幼い君の横顔に絶望を観た
屈託のない瞳の輝きは希望に満ち
それが叶わぬ事を私は知っていたから

荒れて行く地に咲く花はなく
破れかけの本でしか知る他はない

私は君を背中越しに去る
私の服を君は小さな指で引っ張り
行かないで
と縋り付く君の姿が心を締め付けた

明日が来るかも解らない
今日で終りかも知れない

薄い唇が微かに震えた
生温かい風が吹き
雑草の揺れた音が聴こえた

君を抱く事を心の何処かで恐れた
君に優しい嘘を吐く気がしたから
今は小さき汚れた手を握り締める事しか出来ない

「さようなら」の意味を異国の君が知る訳はない
私はお礼の言葉と君の言葉で呟き
君の手を優しく外した

あれから数年が経ち
君の事は忘れた事にしていた
そんな風に思わない
と生きていけない気がした

今も手には君の温もりが沁み込んでいる




自由詩 罪と罰 Copyright 海月 2007-02-24 00:51:25
notebook Home