はらだまさる




羽根のはえた指で
不透明のやわらかい
やわらかい虚無を撫でながら
ゴウゴウと吹きあげる
おおきな風を
待ってる


やあ、とか
ほう、とかって
羽根のはえた指で
お前をすべりおりて
おどけてみせるとき


お前は
両膝のうえに
手の甲をおいて
チン・ムドラ結んで
瞑想しながら
オーム シャンティ、
シャンティ、
シャンティ、
と三唱する


羽根のはえた指で
小3のころから
大事にしてる
ポルシェ956の
チョロQを
俺は、ブン
と走らせたあと
真っ白を
つまみにして
里の曙を
呑む


お前は
それでもまだ
真っ黒な
星の匂いを
吸い込み
瞑想してっから


羽根のはえた指で
俺は偉そうに新聞をひらいて
だけど記事は
いつ見ても
灰色の、
灰色で
北や南では
何万年が溶け
西や東では
神が神を殺め
向かいの家では
母親が実の息子に殴られて


奇妙で圧力的な記号に
俺はぐるぐる、ぐるぐる
錯乱しちまって
馬鹿みたいに
間の抜けた
大きな溜息が
口から
ぼとりと落ちる


それでも


それでも


お前はしずかで
穏やかに
やさしい、
ほんとうに
やさしい顔つきで
瞑想して


滅ばない人々が
失わない
一日を
深呼吸して
金色の輝きに
感謝してる




羽根のはえた指で
やっぱり小3のころから
大事にしてる
ポルシェ956の
チョロQを
走らせ


耳を澄ませながら
ゴウゴウと吹きあげる
おおきな風を
おれは
待っている





お前の過ちと
俺の過ちを
抱きしめる、









平凡な歌を










自由詩Copyright はらだまさる 2007-02-23 20:58:29
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