「だって僕はここにいる」 (青年詩片)
ベンジャミン



薄曇の昼下がり

住宅街の静けさは重苦しい
声をからして叫んでも
余計に淋しくなるからやめておこう

無表情に時を告げる時計
窓の外には音もなく揺れる小枝
こんな日でも世界は動いているんだね

上空数百メートルから見渡せば
それぞれの営みが
絡み合っているのがわかるかもしれない

けれど部屋に閉じこもったままの僕は
小さな点にもなれなくて
水槽の中の金魚が見上げる
天井の真っ白さに似ている

カレンダーには何の予定もないけれど
僕にはちゃんと友達だっているんだよ
だけどなんて話しかけよう

「元気ですか? 僕は元気です」

本当はそんなことじゃなくて
誰かの中に自分を見つけいんだ
だからテレビに向かって何か呟くのは
余計に淋しくなるからやめておこう

独り言を言うようになったら危ない
だけど心の中では同じセリフだけが
繰り返し繰り返し流れ続けていて

「だって僕はここにいる」って

いったい誰に向かって言っているのか
それを考えないようにしていることも
結局自分を守るためだけの
孤独をもてあそぶ一人遊び

自暴自棄にならないように
鏡に映る自分を見つめながら

「ほら みぃつけた・・・」


何か温かい飲み物でも飲もうかな

湯気に息を吹きかけて
自分のかたちを感じるために



      


自由詩 「だって僕はここにいる」 (青年詩片) Copyright ベンジャミン 2007-02-20 14:36:07
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