おはり
こしごえ

針のあなに
糸をとおす
磨硝子からにじむ
光のあわい
しずけさ
のおくのほうから声がする

……わはわをたまわる)

柔軟にしなう
わたしの呼吸をなぞるのは
失われた かなしみ
をちく、ちく、ちく、
と縫いあわせていくのは
しあわせをつつみこむための道のりで
雨のしずくに映る しろいからだの歩調は
舞いおりる雪のように
風に従順であり
柔軟にしなう
わたしの呼吸をなぞるのは
失われた かなしみが
わたしの空でみちながら
すき間をうめてゆれる
とたん夜の領域へ
流れこんでいく
満月の、ひんやりとした ほほえみ

(血の記憶に いざなわれてわはわとなり……

しあわせから静脈へ 静脈からしあわせへ
くりかえす いとなみの心音にあわせた音律で
ラルゴ
滲透していく
さいごまで
ひとはり
ひとはり
ひとはり
こころをこめて
縫いあうのが よろしい







※縫いあう→縫い敢ふ=ぬいおおせる。




自由詩 おはり Copyright こしごえ 2007-02-20 10:49:13
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