「なくした恋の記憶」
和 路流(Nago Mitill)

今、意識して忘れようとしている。
目をそむけ、何もかも知らないように振舞う。
忘却という時の贈りものが
破れ、爛れた傷口を、甘く苦い感傷に変えるのを待っている。

けれど、ささいなことを切っ掛けにして
忘れていたはずの感情が、ふいに蘇り、
僕を、強く揺らす。
胸に深く突き刺さる痛み、ほとばしる悲しみ、
そして、雪崩のような苦しいだけの、愛おしさ。
君への喪失感は、まだ生々しすぎて
無理やり縫い付けておいた傷口を引き裂き、赤い血が零れる。

記憶の中の痛みに
立ち向かえるだけの勇気が、本当は欲しい。
僕の中の君という存在を、黒く染めたくないから。
君を追いかけ、罵りたくなる、僕の醜い感情を
ただ、今は自分に泣くことを許して 止める。

いつかは君を、僕の優しい記憶にする。
懐かしい愛おしさで、君の笑顔を思い出す。


                (2007年・筆) 


自由詩 「なくした恋の記憶」 Copyright 和 路流(Nago Mitill) 2007-02-20 05:23:47
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