ひだまり 〜桜のころには〜
Rin.
流れ落ちるだけの空虚な時の水を
この手でせき止めてはみたけれど
やはり指の間から
少しずつ滲み出してきて
乾いた瞳を潤した
あなたの陽だまり、に
包まれていたことを
こんなにも幸せに思う日が
来ることは知っていたはずなのに
いままで言いたくても、言えずにいた
「ありがとう」を
涙が「ごめん」に
変えてしまった
死ぬのは恐ろしいけれど
僕といたらその瞬間も笑わせてあげる
そんなあなたの約束を思い出しては
またどうしても、ぬくもりを感じてしまうから
いまはボロボロと泣けるほど
悲しくはないのだけれど
桜のころには
舞う花びらで身を切るでしょう
たくさんの白い花びらが
すべて薄紅に染まるほどに
あなたの陽だまり、に甘えていた私
いまようやくそこを訪れる生命のあかしに
耳を済ませています