竿
サナギ

まあ俺が言えた義理じゃねえが
詩を書きなぐっていい奴と
だめな奴がいる

書きなぐっていい奴
そいつは小物しか釣りあげられないが
次々にかかるやつをどんどん捕まえて
当然小物だが生きがいい

俺は小物が釣り上げられて
光を浴びながらぴちぴち跳ねているのを見るのが好きだ

だが
大物を釣れる奴は
諦めずに釣ってくれよと思う

すげえ大物を釣り上げる力も竿も持っているのに
ちょっとぐぐーっと引かれただけで
すぐに手を離しちまうか
簡単に釣れる中ぐらいの奴で妥協するのはもったいねえ

大物を釣るには力と竿と技術も必要だが
力と技術はまあなんとかなるが
竿だけは持って生まれたものだからな

そのよくしなる丈夫な竿がもったいねえよ
お前はねばってねばってふんばって
何日もかけて
大物を釣ってくれ

お前は知ってるはずだ
大物がかかったときのあの力強い引き
自分が引いたり向こうが逃げたりする時の
あの興奮
細い細い釣り糸が
これ以上はないってくらいにぴんと張る
あの美しさ
世界に
あれほど素晴らしい瞬間があるか
多分ねえだろう

そんで何日もかかってやっとこ釣れた大物を
俺たちに見せてくれ
何なら自慢してくれていい

俺か
俺はな
本当は
竿すら持っちゃいない

俺が持っているものと言えば

まあ
言わなくても分かるだろ




自由詩 竿 Copyright サナギ 2007-02-19 13:03:28
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