ひび
服部 剛
みえないじぶんをこえてゆく
ぬげないじぶんをぬいでゆく
このみをしばるなわをとき
なみだのおちたてのひら
にぎり
しめ
(ふりかえれば
(しかばねのごとき
(むすうのぬけがら
にくたいのろうごくにうずくまり
みえないかべにくずおれて
はくだくのうみにおぼれゆく
(あの、うつくしいこえだけが
(みだらにも、やわらかいすがたで
(おれをよぶのだ
(てさぐりのこうふくは、
(いつもむなしくきえさった
「
くろかべに
ぼんやりうかぶ
いっぽんのきょぼく
あたってもあたってもたおされて
かてないじゃくしゃ
それでもまけずに
すがりつく
」
ちからなきわがみ(いきたえだえに、
こどう、たかなり)ひとかたまりに、
みをかがめ、
たちはだかるすがたなきかべにむかって
(ひとおもいに)
嗚呼・・・・・・・・・・!
「
穴
」
を・・・
( その向こうに広がる世界・・・ )
( てをつないでいる・・・ )
( あのひのふたり・・・ )
みえないじぶんをこえてゆく
ぬげないじぶんをぬいでゆく
このみをしばるなわをとき
なみだのおちたてのひら
にぎり
しめ
かてないかべに
こえれぬかべに
くだけぬかべに