no title
一絵

大きい目。とにかく大きい目。
俺があの女への印象を語るとしたらこの一言に尽きる。
大きい目。とにかく大きい目。
小さい体のくせに胸だけは酷くでかい。
ほっそいウエストにどうやってあんなでかい胸がくっついてるんだ!
(しかも2個もついてるんだぜ!)

俺のダチはその女を愛してやまなかった。
しかもあいつはブッサイクなくせにその女を自分のモノにしていたのだ。

「俺は本当にコイツを愛してる。」
あいつはそういうと女の頭を撫でた。
俺の目は相変わらず女の胸に集中している。
しかし女は恥じらいもせずただにこにこと微笑んでいるだけだった。
「無口なんだな。」俺が言うとあいつは「そこがいいんだよ。そこがイイ女だ。」
と言って世界中の誰よりも愛してる!という慈愛の目で女を見つめていた。
その時のあいつの顔は世界の誰よりもキモかった。俺は忘れはしない。

「あ、ちょっと待って。お茶でも淹れてくる。」
慈愛の目がいきなり俺に向けられた。客人をもてなそうという奴の愛を受ける
ハメになろうとした瞬間だった
ぐき
鈍い音がした。
あいつが立ち上がろうとした反動で女は床に倒れ、同時にあいつの大きな
足に踏み潰されたのだ。
「おい!女!ユメカチャン!う、腕が取れてる!!!!」
俺は慌てた。おい待て。こんなときも女はイイ女でいたいのか?
苦しみもせず、叫びもせず、取れた腕を遠くに女は微笑んでいた。
「おい!どうすんだよ!腕・・腕取れてンジャン!」
するとあいつはごちゃごちゃした棚からアロンアルファ(瞬間接着剤)を
取り出しつぶやいた
「あ、取れてやがる。もうこいつはダメだな。」
そして女は、ユメカは、ボンドと一緒にA4サイズの棚の中に放り込まれた。
「あーあー。結構気に入ってたのに。でもまた売ってるし。
明日でもアニメイトに買いなおしに行ってくるよ。」

そう言い残し奴はキッチンへと消えていった。
先ほど女から零れ落ちたアロンアルファがカーペットをがびがびに
していて。
俺は慈愛の目をカーペットのガビガビに向けた。


自由詩 no title Copyright 一絵 2007-02-18 11:35:47
notebook Home 戻る