メタファンタジア
及川三貴

強い空調
眠気を誘う暖かさ
最後まで冷たさに
抵抗している頬へと
手を伸ばして
疲れきっている
あなたから
わたしの
ねえ という
問いかけに答える
ささやかな声までも
奪いたい
口につけたカップが
テーブルと触れ合う音にも
苦しげに眉を寄せて
沈黙が灰のように
積もって層を作り
黄と赤で出来た
明かりを探す
人を笑顔で
手招きする
何を思い出しているの
外の雨は止みそうで
玄関では傘の先から
雫が広がっている
そんなわずかな
熱も萎んで
足も意志も
疲れきって頷くしか
出来ない夜に
同じように
わたしも
力ないまま
優しくあって
あなたの
その場所まで
降りてゆきたい
どうか眠らないで



自由詩 メタファンタジア Copyright 及川三貴 2007-02-18 10:54:08
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