雨 月と魚
水町綜助

雲は月を受胎して
ひどい悪阻つわりに苦しんで
涙を流す


真冬の夜に雨が降る
真冬の夜に雨が降りしきり
町は水浸みずびた
大粒の雨は道路に幾千粒幾億粒も叩きつけられ
それはとどまることを知らず
弾け飛沫しぶきをあげ続ける

すべての輪郭は飛沫しぶきにけぶって強い雨に流される

すべての歴史は飛沫にけぶって強い雨に流される

それらすべての境界は排水溝で渦巻く水に溶け混ざりゆく

真冬の夜の雨
いつまでも降り続ければいい
そして
町を沈め
森を沈め
川を呑み
人を浸し
軍隊を呑み
国境を沈め
歴史を溶かし
皮膚を溶かし
心を溶かし
そしてすべての人の生きる場所を沈め
一皿のスープにしたらいい
いやなら魚にでもなればいい


自由詩 雨 月と魚 Copyright 水町綜助 2007-02-18 10:35:42
notebook Home