完璧なスマイルで
三架月 眞名子

あぁ
逢いたくない
逢いたくない

いつもは
恋い慕っている彼に
今は逢いたくない
逢う自信がない
そもそも自分に自信がない
だから
比べてしまうんだ
あの子と自分を
比べるだけ比べて
被害妄想に苛まれて
自暴自棄になって
深みにはまっていく

何で私なの?

最後はそこに辿り着く

私の代わりなら
誰だって出来る
むろんあの子だって
もし私が消えたら
完璧に私の穴を埋めるだろう
きっと
私が存在したという
痕跡すら消し去るだろう

じゃあ
私はあの子の代わりになれる?
出来ない
出来ない
出来ないよ
私には

だって
彼は私に
人形の役を求めている
笑って側にいればそれでいい
そして彼はあの子に
人間の役を求めている
質問をすれば
適切な答えを返せる人間という役

人間は人形を真似れるけど
人形はいくらがんばっても人間にはなれないじゃない
彼とあの子のやり取りを
側で見てるしか出来ない
ガラスの目で
泣くことも許されない目で

そのことに気付いてしまったら
どんな顔で彼に会えばいいの?
泣けないなら
どうやって悲しみを表現したらいいの?


そう思いながら彼にあって
私はめちゃくちゃに泣いた
泣きながら思いをぶつけた
思いつく限りの言葉を発して
私は沈黙した

すると彼は
もうおしまい?
という顔を浮かべて
笑った

笑った

笑いながら
私の不安の絡まりを
一つ一つほどき出した
丁寧に
確実に
あやす様に

気がつくと
絡まりは一本の線に戻っていた
涙は乾ききっていた
私には
気まずさと恥ずかしさが残った

悔し紛れに最後に一言

私でいいの?

と聞くと
彼はなにも言わずに
笑った

笑った

完璧な笑顔で

あぁ
私は
この笑顔には勝てない


自由詩 完璧なスマイルで Copyright 三架月 眞名子 2007-02-17 22:19:07
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