鈴慕
朱雀

時の端尾はつおを握り締め

いまだ名もなきなりを孕み

音なき音に耳をそばだ

真空妙有のうつに凪ぐ


深遠にむ白い背に

腫れた日常 穿つがごとく

瓊枝けいしに掛けた鐸鈴たくれい

シャラン シャリリと音連れて

シャラン シャリリといぶ


つがる言の葉 しろ

にも晴れにも

奔放不羈なたまを刻まん





※この詩のテーマはサナギです。
サナギは今でいう鈴の事で昆虫の蛹(サナギ)も同意です。
またサナは「真空」、ナギは「凪ぎ」という意味もあり、サナギを木に掛け真空状態で
凪いでいるとそこに風が入りその音を聞いて魂を振るわせたり鎮めたりします。
そしてそんなふうに精神を変化させるものを『タマ』と言い、魂の元の形と言われています。

「鈴慕」というのは尺八の曲名で、中国の張伯が普化禅師の鐸(サナギ)の音を慕って
作ったという伝説によるものです。また「恋慕」から転じたとの説もあります。


自由詩 鈴慕 Copyright 朱雀 2007-02-15 20:33:55
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