鈴慕
朱雀
時の端尾を握り締め
いまだ名もなき形を孕み
音なき音に耳を欹て
真空妙有の現に凪ぐ
深遠に籠む白い背に
腫れた日常 穿つがごとく
瓊枝に掛けた鐸鈴が
シャラン シャリリと音連れて
シャラン シャリリと霊を揺る
い繋る言の葉 依り代に
褻にも晴れにも
奔放不羈な魂を刻まん
※この詩のテーマはサナギです。
サナギは今でいう鈴の事で昆虫の蛹(サナギ)も同意です。
またサナは「真空」、ナギは「凪ぎ」という意味もあり、サナギを木に掛け真空状態で
凪いでいるとそこに風が入りその音を聞いて魂を振るわせたり鎮めたりします。
そしてそんなふうに精神を変化させるものを『タマ』と言い、魂の元の形と言われています。
「鈴慕」というのは尺八の曲名で、中国の張伯が普化禅師の鐸(サナギ)の音を慕って
作ったという伝説によるものです。また「恋慕」から転じたとの説もあります。