機能
カンチェルスキス
波打際から少し離れた砂浜で亀が死んでいた。
漂着したパイナップルか自転車のサドルみたいだった。
もう空は暗くなり、湾岸線のオレンジの光が砂浜に広がっていた。
亀の伸びた首は根元から左に直角に曲がってた。
四つ足は赤ン坊の手と足みたいに縮こまっていて
無数の皺に包まれていた。
甲羅はコカコーラのネオン看板の光の先で
淡いピンクに染まり
触るとまだ湿っていた。
ダンス系の音楽がずっと聞こえていた。
発電機を持ち込んだグループが松林の間でライトを照らし
テーブルや椅子をセッティングして
音楽に合わせて踊ったり歌ったりしてた。
ひどい冗談が続きすぎて
どれが笑える冗談かわかりかねてるような騒ぎだった。
亀は動かなかった。
いつ死んだのかわからなかった。
そばに先の焦げたしっかりした重さの棒が落ちてた。
誰かがそれで殴ったのかもしれなかった。
グループから離れた二人が歩いてきて
砂浜の真ん中で立ち止まった。
自分たちの姿を隠すものは何もなかった。
抱きしめあうとキスした。
もしいるとしたら神でさえ戸惑ってしまうような
研ぎ澄まされた静寂の瞬間だった。
足元の砂に映った一つの濃い影が
二つに分かれた。
二人は自分たちのグループのところに歩いていった。
フルボリュームの音楽と体を小刻みに揺らすだけの踊りは続き
発電機の音が砂浜全体の空気を振動させていた。
直角に左に曲がった首を手でまっすぐになおしても
亀は動かなかった。