内緒話
川口 掌

なんとなく笹身が食べたくなった
馴染みの肉屋を覗いてみる

「おじさん笹身ある?」
「おぉっ!活きのいいのが入ってるよ」
二つ位は食べれそうだ
「じゃあ二本ちょうだい」
g108円の秤がちょうど100gを指している
おじさんが辺りを見回し笹身をもう一本取り出した
「かぁちゃんいねぇなっ!」
「一本サービスしとくよ!」
「また来てくれよ!」
「かぁちゃんには内緒にしといてなぁ」
三本になった笹身を食べ切れるかなぁと悩みつつお金を渡し店を出る

この店のおじさんはいつもこうやって何かしらサービス品を付けてくれる
逆におばさんの方は料金の端数をサービスしてくれる
どちらもお互いには内緒だよなんていつも小声で囁く

多分店を終え帳簿をつけながら
こうやろう ああやろうってな話を念入りにしてるんだろう

だけど自分の連れには秘密にしておく内緒事を
お客さんと共有する

すると相手にちょっと私の方が
奥さんより 旦那さんより 上なのかしらと
錯覚させる事が出来る


あちらの角もこちらの角も
立てられるよりは立ててしまえとばかりに
ぼこぼこになって
丸みを帯びれば良さそうなこの頃で
みんなが笑顔で過せる
きめの細かい地域密着型の心遣いを感じる




ところでこの話
あなたと私だけの

な い し ょ

にしておいてねっ



自由詩 内緒話 Copyright 川口 掌 2007-02-15 01:41:16
notebook Home 戻る  過去 未来