家に帰る
水在らあらあ
背中がまがっているよ
葉巻が落ちたよ
おじいちゃん
手を 貸すよ
おじいちゃん
買い物のビニール袋が
たくさんだよ
おばあちゃん
手を 貸すよ
おばあちゃん
ぼくらの世界は
はかないね
時間って
残酷だね
ぼくは東の果てから来ました
お米の国から来ました
優しい人々が
優しいから
自分を捨てている国から来ました
赤だから
待ちましょう
横断歩道
このゼブラは
ぼくのことです
こうやって人々に踏まれて
雨に洗われて
ガムが張り付いて
吸殻で焦げて
信号に
決め付けられて
車来ないから
赤でもいいや
渡っちゃおう
いくよおじいちゃん
いくぜおばあちゃん
おばあちゃんこのネギいいね
これどこで買ったの
おじいちゃん帽子かっこいいね
葉巻 太いね
でもおれまた禁煙なんだ
煙に巻いてる場合じゃないから
人生は短いから
一回しかないから
一回しかないから
それでいいんだから
それでいいんだから
大好きだから
大好きだから
だからはかないなんて
言うのよそうね
ほら公園では孔雀が子供たちと遊んで
向かいの中国屋さんでは南アメリカの移民が店番している
おじいちゃんは知っているでしょう
おばあちゃんも知っているでしょう
世界は広くて
人々は優しくて怠惰で
愛しあって殺しあって
それでも子供たちは生まれて
それはきっと愛で
この世界は愛でできていて
どんなにおかしくたって愛でできていて
おかしくなるのが愛で
そんなことはおじいちゃんもおばあちゃんも知っていて
ぼくもいいかげんわかっていて
いいよネギ おばあちゃん持ってきなよ
なに作んの スープ作んの おれも今晩そうしようかな
葉巻もいいよ でもおじいちゃんあんま吸いすぎんなよ
ありがとう
じゃあね
またね
今度はおじいちゃんの初恋の話を聞かせてよ
俺そういう話好きなんだ
おばあちゃんのファーストキスの話聞かせてよ
あ、おばあちゃん赤くなった
家に帰るよ
家 あるよ
なさそうに 見えるかな
移民だけど
屋根も 食べ物も 一応ベッドもあるよ
恋人に晩ごはん作んなきゃ
ああ いいこだよ ここのこだよ
地球に 不慣れな感じだよ
俺はもう慣れてるから
多分俺何回も繰り返してるから
それがいいんだ
すごくいいんだ
バスクベレーのおじいちゃんと
紫がかった白髪の上品なおばあちゃんと
タバコ屋さんで宝くじ買って帰る
だれが当たっても山分けだって
世界を見てまわるって
世界中に友達を作るって
おじいちゃん世界中に恋人を作るって