かよわき人々
atsuchan69

ほのぼのした顔で
有るったけ ふみにじり、
思う存分に略奪して
走り去ろうと
する

 と、

足に纏わりついた母
「行かないでおくれよ

なんて云うので
「ああ、そう
お腹空いたから
ごはん作ってよ

某国の軍服を脱ぎ、
炬燵に入る
今夜はスキヤキ。
それも苛め抜かれた
極上の但馬牛ロース

 さて――
この歳になって想うことは

ツレ(友人)が皆、
そこそこのポジションにいて
僕の一言で、いざとなれば
数十人は動いてくれることだが

「殺れ とは言わない
しかし咽喉まで出掛けることもある

ガラス一枚隔て
窓の外は木枯らし吹く路地裏
首を吊った
照るテル坊主が
恨めしげにコチラを覗く

 (不運だ なんだとか云うなや、
  死にたいんか? ワレ

南部鉄の鍋のなかでは、
ピンクの霜降り肉が
白滝や豆腐、菊菜にまじって
ぐつぐつ煮えはじめている

ちょうど食べごろになって電話・・・・

「なんでも探偵社のPです、
ご依頼の人物の素性が判りました
――ウィリアム・ワーズワース、
詩人です。

 えっ? 詩人かよ )))

「よし、関係者全員を殺れ!

その一言で、
手下たちはマシンガンを抱え
【ムンクの叫び】を
街中 そこかしこで行なった

ドゥルーズのいう
感覚の論理・・・・
また、
ベーコンの絵のような
奇怪な顔、顔、顔

そこへ一匹の蜘蛛が、
遥か天上世界より降りてきて
か細い糸を垂らし
手下のひとりの鼻先で止る。

蜘蛛を見つめようとする彼の
近視眼的な深刻さと驚き

 ――なんとも滑稽な!

死への道のりは、じつに不快だ
殻を割り、小鉢に卵を落とす
レアな肉に絡めた黄身のつめたさ
そして粘りが口の中で丁度良く

 ウィリアム・ワーズワース・・・・

「あれ? 彼って、
もうとっくの昔に死んでいた筈

「いやー、それはそれは。
関係者諸君、
たいへんすまなかった
だけど、もう殺っちゃったんだ
街の人たち 全員

 きゃはー
「母ちゃん、ごはんお替り!









自由詩 かよわき人々 Copyright atsuchan69 2007-02-13 01:07:48
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