日々の始まり
海月

1:至福の裏側で不幸の影をちらつかせる

孤独が好きな癖に人に縋り付く
満たされる事ない欲求を抑える為に
僕は君を抱いた

孤独になりたくないから人を求める
そんな君は世界の果てをみたかの様に
自らの体を提供する

2:天窓から射し込む光は円を描いた

宇宙の広大さからみたら小さな存在
重ねた罪の重さも解き放てる程に
世界の偉大さに溺れた

宇宙の片隅では誰かの命が消える
自分自身を取り囲む優しい円
揺れながら私の元へ近づき
最後は私諸共消える

3:夕立の音は作り出せない自然の旋律

時を止めるかの様な夕立の音
縁台の風鈴が夕立を浴び
遠い旋律を運んできた

聴き慣れた曲でさえも新鮮に感じる事がある
何度も何度も同じ曲しか弾けないオルゴールでさえも
時間を経たして聴けば心地良く感じる時もある

4:「永遠」に気づくと砂時計は残りの日々を零していた

生温い、愛。
生温い、だから、だからこそに。
渇いた肌に沁みこんで永遠に繋がりたいと思える

何処にもない
安らぎが其処で湧いていた
砂時計の砂みたいに下に零れてきた
今はただ降り続く砂に安堵を憶えた

5:不幸の片隅で至福の芽が地面から出てきている

温もりと微かな香りを残し
君は僕の目の前から姿を消した
カーテンが静かに揺れている

孤独を好んでいたのに
手に入ってみると何処かあっけない
何かが違う

人を失って手に入れた孤独
最初から何も持たない孤独

不幸の片隅で新しい日々が始まった






自由詩 日々の始まり Copyright 海月 2007-02-13 00:16:57
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