ひとくみの
ポッケ

快速急行の扉にもたれるはりつく
体を支える一枚の板
堅いものはもろくもあり
安心してはいられない

となりに見えるレールがなめらかにうねっていく
滑らかな流れは
どこからやってくるのだろう

突然

―ああ 何かみたいだ

なんだろうなんだっただろうこれは
白く
長く
しなり
うねるもの




―かんぴょうね

女がいった




…そう、それはかんぴょう
ぼくの手には水を吸った真っ白なかんぴょう…


女はぼくの物思いを奪い取り
もどしたてのかんぴょうみたいね、と続けた

そういう女の手にもかんぴょうが握られていた



 こんなの初めてだ


 初めてよ


 かんぴょうだなんて


 かんぴょうだなんて


 かんぴょうだから なかなかかみ切れないね


 かんぴょうだから 地味でいい味になるわね



ぼくたちは

空いてるほうの手同士握り合い

片手に自分のかんぴょうを握り

ふたりで

白いレールを二本こしらえた


永くしなやかな

ひとくみのレール






自由詩 ひとくみの Copyright ポッケ 2007-02-08 00:18:13
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