二月一日 自由
水町綜助
心の中に一つの頑健で豪奢な台座をこしらえてある
それはいつ頃造ったものか忘れてしまったが
確かなことはその台座は心の中のどこよりも高くに設置したもので
僕という人間は多聞に洩れずあまねく不浄を混ぜ込んだ破断したパレットで
台座はその色の絨毯から一直線に天に向かって屹立している唯一の
外に向かって誇示されている生殖器ということ
人生史上最高の味だ
と多方面から絶賛されていたカレーライスを食べに行った
確かにうまかったが実際それほどでもなかった
店を出てきみに同意を求めるでもなくそう呟くと
曇ったガラスが嵌め込まれたドアはからりと音をたて閉じられ
緑青の晴天は冬をちりちりとやき
その余剰波で町はほんのりと白く照らされていた
たったそれだけのことだが
不意にわけもなく
自由などと
晴天に走り書きしてみると
わらえてきて
それでほほえみかけると
ぽかんとしたきみの顔は綺麗で
僕は犬みたいに放り出された気分で
楽しくて
きみにわけを話して
きみも連れて
そのまま旅行へでかけた
くだらない目的のために
くだらない目的のために