赤城山
あおば



             1999年11月6日
空っ風の中で
紋次郎は立ち止まる
家に寄ろうか
いや、止めとこう
妹も生きては居るまい
帰ったって何もありゃしない
家の跡が4隅に残っている
そんなことすらあるまい
今頃は隣のごうつくばりが
更地にして耕して耕して
麦でも生やしていることだろう

気の遠くなるような冷たさだ
空きっ腹の背中がうなり声を立てる
赤城降ろしが吹き出したのだ
空は澄んで真っ青なのにお山の方は
黒ずんで雪雲が渦巻いている
北風がときおりハラハラと
無機質な雪片を運んでくる
陰気な顔で冷たい視線を放つ

まだ陽があるから
急げば今日中に
熊谷の宿に着けるだろう
三次のところで
わらじを脱いで
長ドス研いで
秩父に行こう
こう懐がさぶくては
きれい事では済まされない



自由詩 赤城山 Copyright あおば 2007-02-04 06:47:45
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