水の在るところ
水在らあらあ






名古屋から来た君は
動物園通りを抜けて
髪の毛ぼさぼさで
連絡を待つ
ろくでなしの
連絡を待つ

ろくでなしは
その時ある一つのやさしさに抱かれていて
抱いていて
はがれていて
はがされていて

公園の木が
はだかだよ
バスクベレーかぶったおじいさんが
小さな男の子を連れているよ
ラバーソウルはいた若いお母さんが
ちいさな子供の手を引いているよ
きっと公園を抜けて
学校に送る途中だろう

単車乗りの君は
吹き飛ばされそうになりながら疾走して
そして突然佇むんだ
その停止は澄み渡っている
そこで君の感情は澄み渡っている
だから俺は君の詩が好きだ

よごれた川岸や
歩道橋の下
きれいな君の目は
その景色をなんとか愛そうと勤める

桜木町にようこそ
この台湾料理屋
店長めちゃくちゃだけど
もやし炒め100円だぜ
シナチクも100円だぜ
まあ飲もうぜ マンガ男
マンガ男って
ひどいね
でも店長いつも
あんなだからさ

隣にきれいな女の子が二人座る
店長が触っちゃだめだよって言う
うそうそ、このひと
見かけだめだけどいいやつ
いいやつ ね

なあサラリーマン生活してみたいって
東京に出てきて
扇子職人の君が
東京に出てきて
どうよ いいの
名古屋から東京出るなら
ヨーロッパ出ちまったほうがはやいぜ
道も広いぜ
でも君が佇む風景は
東京のほうが多いかな
優しい君の目が
寂しさを
美しさを感じる場所は

君が単車に乗ると
骸骨とかピエロとかが踊るんだろう
それでひりひり言いながら君は命を燃やして
それでまた佇むんだ

親不孝通りはどこですかって
外に出て行った君は帰ってこなかった
俺はコンビニの前にすわって
小さな電話で好きだとか言ってた
好きだって叫んだら
チンピラが一瞬喧嘩やめたぜ
その頃君は
そのコンビニのトイレでスロットの夢見てて
そしてそのあと警察来て
おでんのカップで水飲まされて
俺は君が見つからないから
川岸をらあらあ歌いながら歩いて帰った

バスクベレーかぶったおじいちゃんは
ベンチに座って芝生で跳ね回る子供を見ている
ラバーソウルにきれいな金髪のお母さんが
公園の出口に向かって歩いてゆく
小さな子供はもういない
お母さんタバコ吸ってる
すてきな かんじだよ

なあこの公園には孔雀がいるんだよ
もう家には何本も孔雀の羽があるよ
君にあげたいから遊びにきてよ
遊びにきてよ

バイクで走らなくたって
ひりひり
びりびりゆう風はあるぜ
その疾風のなかに
君の心をぶち込め
そして佇んだら
トイレでスロットも見えないから
おでんのカップで水も飲まないから

でもそれがいいのかなあ
そういうのがいいのかなあ
おでんには俺もやられたよ
一緒に食べた女の子にも完全にやられたよ
星は輝いていたよ
空気は 湿って

人ごみの真ん中で
泣いているような君が
それで肌を求める君が
水の在るところで生まれた君が
水の在るところに今いる俺が

俺の生まれたところにも水が流れていてさ
そのどぶ川の壁に咲き誇るあじさいを今も覚えている
母親と一緒にみたんだ
でも夕方になると上流の養豚場から
ひどい匂いの水が流れて
俺はそれがひどく怖かった
嫌だったんじゃなく
ひどく怖かった

家から駅に向かう途中のトンネルにね
いつもジプシーがギター弾いててね
今日パン買うはずの小銭をあげちゃったよ
だって俺がいない二ヶ月のあいだに
めちゃくちゃよくなっててさ
しかも俺の好きなゴリラみたいなルーマニアのアコーデオン弾きと
一緒にやってるんだぜ

だから
遊びにきてね
孔雀の羽
きれいだから
遊びにきてね
絶対きてね
君の恋人たち
みんな連れてきてもいいけど
鴨居の女の子にしときな
君の寂しさを愛する
あのやさしい心に










自由詩 水の在るところ Copyright 水在らあらあ 2007-02-02 18:26:30
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